小さな会社の作り方

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2014年12月リニューアル

小さな会社の作り方Q&A)


小さな会社の作り方

  平成18年5月から新しい会社法が施行され、合同会社という新しい形態の会社ができ、有限会社も特例有限会社(有限会社という名前の株式会社)として存続しています。

 ここでは、(特例)有限会社と株式譲渡に制限がある株式会社と合同会社を前提として解説します。(平成21年4月現在の税制によっています。)

Ⅰ 事業形態と税金

① 形態比較

  個人で事業を行なう場合には○○商店という形で私的な生活とは別の商売人としての活動を行ないますが、会社組織にすることによって明確な形で営業活動を行うことが出来ます。


区   分

個人

会社

事業所の形態 個人事業所:個人が開設者(事業主) 会社の事業所:開設者は会社、個人は代表者(経営者)
権利義務関係 全ての権利及び義務が個人に帰属する。(無限責任) 権利義務は会社に帰属し、個人は役員として給与をうけ、株主として配当を受ける。(有限責任)
税務関係 事業所得として所得税、住民税及び事業税が課税される。 会社の利益には法人税、法人住民税及び事業税が課税される。

 会社で事業を行った場合には権利義務は一応会社に属し、倒産などの場合でも個人は株主として出資額を限度として責任を取ることになりますが、銀行などの借入れに際し個人保証をしていることが多いでしょうし、経営者としての責任を問われることもあります。  つまり、自分の株券を紙屑にすることでは済みませんようで、特に、その業界で再起を期そうとする場合には個人財産をもって会社の負債を弁済しなければならないようなことも稀ではありません。
1.会社、個人事業比較(税金の比較)



前提条件と図の見方

 事業所得が2,000万円の場合で個人事業と会社経営の場合を比較しています。グラフの垂直方向に個人または会社の利益から税金を引いた手取額を記入しています。つまり、上にあればあるほど、良いということになります。

また、水平方向に社長の報酬を変化させています。

 個人事業の場合手取額が1,316万円で社長の報酬の影響を受けませんが、会社との比較のため青の水平線で示しています。会社の場合、受取り手が社長個人と会社の2人になります。

 
有利な報酬額と会社の剰余金の意味


 社長の報酬額の多寡によって、社長自身の手取額は勿論のこと会社の剰余金も変わってきます。社長の報酬を減らせば会社の剰余金は増えるという逆方向の相関関係もありますが、会社+社長の合計手取額も変化します。

 では利益がある金額(例えば、この例のように2,000万円の場合)には社長がいくらの報酬を取れば、税金が安くなって最も有利になるのでしょうか?

A)一つの考え方として、会社と社長個人との単純合計での手取額が最大のときが最も有利な報酬額だとすることもできます。報酬が1,200万円あたりがこれに当たります。ただし、この報酬額では社長個人の手取額は270万円程度減ることになります。

B)次に社長の手取額を最大にするという方策を採るのであれば、報酬を2,000万円近くとれば良いのですが、会社の剰余金は0かマイナスですし、合計では少し見劣りすることになります。

C)社長の手取額が個人時代と同じであれば、あとは会社に残した方が良いとする考えもあります。この例では、社長の報酬は約1,600万円で、会社に270万円ほど残ります。

 利益が大きくなれば、これらの間隔も大きくなってきますし、Aの点より低い報酬額にし、会社に積極的に残すべき場合も生じます。

 次に、会社の剰余金ですが、会社の財産となって現金預金、設備、運転資金などの形で残っているはずです。もしくは借入金の返済の形を取っているかもしれません。このように、会社の剰余金は会社自身のためには使えるのですが、社長だからといって勝手に使えるわけではない建前です。ただし、株主は社長とご家族ですので、誰も文句を言わないのですが、税務署は社長はタダでお金を借りているのだから金利相当額だけ得をしているのだと言います。つまり、会社は貸付金に金利を取り同額だけ社長に役員報酬を上乗せしたのだという主張です。

 このように会社の剰余金を会社のために使う分には問題はないのですが、社長がただで使うというわけには参りません。ただ、実際上は会社が成長期にあるときは資金需要が旺盛ですし、銀行も易々と融資してくれませんし、一般的には、社長個人のお金を会社につぎ込んでいる例が多いようです。

 銀行融資を受けるについては、会社に利益が多いほど、剰余金が多いほど有利になるようです。我が国の実状は、創業期の会社が資金を得るのは大変なようで、まずは利益を得ること、次に節税などにより、会社もしくは社長個人に資金を残すことが必要なようです。


③ 会社の税務上の注意点

 
法人税率は2段階定率


 会社の利益には、まず法人税、次に都道府県民税と市町村民税の住民税、さらに事業税がかかります。

 法人税は所得(概ね税引き前利益)に対し18%、ただし、800万円を超える部分については30%の2段階の税率が適用されます。

 県民税と市民税を合わせた住民税は法人税額の17-20%の計算になっています。税率は各自治体によって異なります。また、利益があってもなくても7-8万円の均等割の税が上乗せになります。

 このほか事業税が会社の利益に対し、3段階で2.7%~5.3%(大阪府は、2.95~5.78%)かかります。ただし、事業税は支払い時の損金になりますので、実質的な税率は法人税と住民税分だけ割引になります。

 全部合わせて、大雑把なところでは800万円までの金額に対し、23%で、これを超える金額に対し39%となります。このほか、住民税の均等割がかかることになります。

総合課税が原則


 個人の場合ですと、例えば給与、事業、不動産の譲渡など所得の種類によって税率など税金のかけ方が違いますが、会社の場合、何で儲けようと合計で同一の税金がかかるのが原則です。例外は、次に挙げるものが主なものです。

このほか、注意すべき点は法人税と住民税は損金に算入されません。つまりは法人税と住民税は概ね税引前利益に対してかかることとなります。

交際費

 いわゆる、飲み食いと贈答に対し、一定限度額以上が課税の対象になります。資本金が1,000万円以下の会社の場合、600万円がこの限度額となります。なお、限度額の範囲内の金額であっても10%分だけ課税の対象となっています。

 社用族の冗費節減、自己資本の充実などを目的とした時限立法でありましたが、期限が切れましても更新を繰り返し、今日に至っています。事業会社は世界市場での競争があり、コスト削減に努めているのに対し、公務員は居酒屋タクシー、マッサージチェアなどの浪費を行っています。お役所と公務員にも「交際費課税を!」と言いたくなります。

寄付金の限度額

 寄付金についても限度額があり、資本金と利益によりこの金額が変わりまして、資本金1,000万円で利益が500万円くらいの会社で数万円です。このほか、別枠同額で公益増進法人に対する寄付金や枠無しの指定寄付金などがあります。実際に寄付をされますとき、相手方にどの区分になるか証明書はあるのかお確かめになるとよろしいでしょう。

特殊支配同族会社の業務主宰役員給与の損金不算入制度

 他にも条件がありますが、社長一族の持ち株比率が90%以上で、社長の給料と会社所得との合計が3,000万円以上の場合、または3,000万円以下でも社長の取り分が半分超の場合は、社長給料の給与所得を会社の利益に上乗せして法人税等が計算されます。(社長の給料と会社の所得が1,600万円以下であれば、この規制は外れます。)

 下記に詳説しますが、会社設立時の株主構成を考えておく必要があります。

Ⅱ 会社のメリット、デメリット

①デメリット

 
交際費の限度額


上記のように小さな会社の場合、交際費の枠があります。個人の場合、事業に必要であれば無制限ですが、すべてが経費とはなりません。実質的には会社の方が経費になりやすいのではないかと思っています。

 
議事録等の文書作成、帳簿や申告書の複雑化、登記手続


 個人より、様々な面で手続きが増えます。ご自身でされるか、手数料を払って誰かにやってもらうということになります。一般的には会計事務所に依頼されるということが多くなると思います。個人の場合より顧問報酬なども増えますし、メリットと法人化による費用の増加を比較検討してのご判断ということになります。

② メリット

 
経営と家計との分離、個人の運転資金や設備資金調達からの解放


 どんぶり勘定の個人事業から、一応は会社組織で事業を行うわけですから、会社と個人との関係をはっきりすることが出来ます。会社に剰余金が貯まってきますと会社自身で資金を賄宇ことが出来ましょうし、会社が銀行から借入金を行うことが出来れば、社長個人の連帯保証という点を除けば、個人が資金を調達する必要がなくなります。

 
事業の永続性、許認可の存続性、世代交代の円滑性


 例えば、お酒屋さんのような許認可を必要とする事業を個人で営んでいる場合には、その許認可は個人に与えられていますので、事業主の万一の場合、再度許認可を得る必要があります。時間的な間隔が生じたり、新たな申請は厳しい基準を満たさなければならないといったリスクが生じます。この点、会社で許認可を受けている場合には、社長が代わりましても代表者変更の届出程度で済ませることが出来るのが原則です。

 一般的に、事業や許認可を永続させるという目的には、会社で事業を行うことが最適といえますし、世代交代についても事前にかつ、円滑に行うことが出来ます。

 
対外的信用の増加、節税


 例えば、初対面の方に名刺一つお出しになっても、個人と会社では与えるイメージが異なります。我が国の多くの事業が会社で営まれています。事業にかける意気込みも違って見えます。

節税になることは、既に述べましたが、次に表でお示しします。


Ⅲ 法人、個人の税務等比較

  個 人 事 業 会    社
① 決算期及び申告時期 暦年(1月1日から12月31日)、翌年3月15日まで 任意の1年間(例:4月1日から翌年3月31日まで)、年度末から2ヶ月(または3ヶ月)以内
② 所得の分散、給与所得控除の利用 青色事業専従者は給与所得として、給与所得控除がある。 社長も給与所得者として給与所得控除がある。
③ 税率 住民税を合わせ、15から50%迄の超過累進税率 大雑把なところでは800万円までの金額に対し、21%で、これを超える金額に対し35%となります。このほか、住民税の均等割がかかることになります。
④ 退職金 青色専従者にも退職金は出せないが、小規模共済の制度が事業主を含め適用可。退職所得となり、税法上有利な扱い。 役員退職金は会社の損金、受取側の退職所得。退職金は代表取締役から監査役、監査役から非常勤顧問など大幅な職務変更に対してその都度支給が可能。
⑤ 社会保険料 国民年金(+国民年金基金)と国民健康保険。各保険料は社会保険料控除の対象。
事業主と専従者は雇用保険と労災保険は原則対象外
厚生年金と政府管掌の健康保険。各保険料は社会保険料控除の対象。厚生年金は高負担高受給であったが、財政的な破綻が喧伝され、国民年金に国民年金基金を組み合わせる方が、安全かつ、好条件とも言える。
⑥ 生命保険料 一般生命保険の他、年金タイプのも加え、各10万円が生命保険料控除の限度。 会社受取の生命保険料は掛け捨てタイプだと損金になるが、保険金受取時は会社の益金となるので、退職金として、支払わなければ、法人税等の課税を受ける。
⑦ 交際費、寄付金 事業に必要であれば交際費は無制限ですが、それ以外は経費とはなりません。
主務大臣の指定を受けた寄付金などについては1万を差し引いた金額が寄付金控除との対象となります。(上限もあります)
小さな会社の場合、600万円の交際費の枠があります。これを超えた部分と600万円以下の金額の10%は損金にはなりません。
寄付金は国等への寄付を除き数万円の枠があり、これを超えた部分については課税対象です。

⑧ その他の経費 事業に必要であることが条件です。 個人と違い、家計消費部分がないので、経費(損金)にはなり易いようです。
⑨ 決算操作(方法選択の可能性) 決算操作は殆ど出来ません。 減価償却が任意償却となるほか、方法・金額について、選択の幅が広くなります。
⑩ 税の特典 殆ど無い。 いろいろな特典がある。
⑪ 備付帳簿、申告書 青色申告は複式簿記が原則。申告書は比較的簡単。 帳簿は個人とほぼ同じですが、申告書は複雑。
⑫ 税務調査 業種にもよるが、比較的少ない。 個人と比較すれば、頻度は高くなる。
⑬ 議事録等の文書作成 必要なし。 株主総会(及び取締役会)の議事録を作成し、保存する必要がある。
⑭ 変更登記など 特に必要なし。 株式会社は役員に任期がありますが、最大10年に出来ます。また、従来からある有限会社や合同会社の役員の任期はありません。役員は任期毎に登記の必要があり、そのほか登記事項に変更があればその都度、変更登記をしなければならない。
⑮ 相続、事業継承 個人の廃業と後継者の開業の手続きが必要。特に、許認可事業の場合、再度申請の必要がある。 比較的円滑に、事前に、良い時期に事業継承が可能。相続税は節税対策が立てやすい。

Ⅳ 設立手続きと費用

 新会社法により、小さな会社向きの有限会社が今後、新しく設立することが出来なくなりましたので、合同会社か株式会社が一般的で、いずれも有限責任会社です。

 合同会社は新しい制度で、耳慣れない種類の会社ですが、ご自身で作られるのでしたら、最低6万円で作れます。年間1万件程度設立されていますが、自社ビルの管理会社などごく個人的な利用としては最適です。役員変更などがなければ、その後の登記などの費用がかかりません。

 対外的信用ということであれば、やはり、株式会社(年に数万件設立されています。)となりますが、用途に合わせて、社名は同じですが、幾つかのパターンがあります。費用はご自身でされるのでしたら、25万円ほどです。さらに電子定款にしますと定款に貼る印紙代4万円を節約できますが、電子認証など手続きは少し厄介です。司法書士等に依頼されるのであれば、報酬が加算されますが、電子定款にしますので、印紙代が節約できて、総額30万年程度に収まりそうです。次のⅤの注意点などがあり、信頼できます司法書士さんに依頼されますことをお勧めします。

 なお、登記手続きは法務局のホームページに説明と用紙(ワードなど)が用意されています。

http://www.moj.go.jp/ONLINE/COMMERCE/11-1.html

Ⅴ 会社設立時の注意点

 監査役、取締役会、会計参与などは置かず、株式の譲渡制限を設け、役員の任期を10年とすると一番手間や費用のかからない会社にできます。その後の発展に従い、組織を変更していくやり方が賢い方法です。取締役は1名以上3名程度とし、複数あるときには代表取締役を選任すると良いでしょう。

 資本金の制限はなくなりましたが、当初の運転資金と設備くらい賄える金額がよいでしょう。また、現物出資も簡単になりましたので、お使いの自動車なども現物出資できます。但し、1,000万円未満にされた方が宜しいでしょう。資本金が1,000万円を超えますと法人税や住民税の関係で不利益な場合があります。また、資本金が1,000万円未満ですと最初の2年度は消費税の免除業者になれます。

 株主(出資者)は一人でも構いませんが、次に述べる「特殊支配同族会社の業務主宰役員給与の損金不算入制度」は厄介な問題で、設立時に11%以上の株式を親族以外の方に持っておかれた方が良い場合があります。

Ⅵ 特殊支配同族会社の業務主宰役員給与の損金不算入制度

 社長一族の持ち株比率が90%以上で、社長の給料と会社の所得の合計が1,600万円超であり、次の何れかに該当するときは社長給料の給与所得を会社の利益に上乗せして法人税等が計算されます。(社長の給料と会社の所得が1,600万円以下であれば、この規制は外れます。)

 ① 社長の給料と会社の所得の合計が3,000万円超のとき

 ② 社長の給料と会社の所得の合計が3,000万円未満で、その内、社長の給料が50%を超える場合

 

Ⅶ 設立後の手続き

① 労働保険(労災、雇用保険)・・・設立から10日以内

労働保険保険関係成立届、概算保険料申告書など(労働基準監督署)

雇用保険適用事業所設置届など(公共職業安定所)

※ 添付(または提示)書類あり、事前にお問い合わせ下さい

※ 法人成りの場合には各種変更届

② 社会保険(健康保険、厚生年金保険)・・・設立から5日以内

新規適用届など

※ 添付(または提示)書類あり、事前にお問い合わせ下さい

※ 法人成りの場合には各種変更届

③ 税務署

法人設立届(設立から2ヶ月以内)

青色申告の承認申請書(3ヶ月以内で、かつ、初年度の末日)

減価償却資産の償却方法の届出書(初年度の確定申告期限)

棚卸資産の評価方法の届書(初年度の確定申告期限)

有価証券の評価方法の届出書(初年度の確定申告期限)

給与支払事務所の開設届出書(事務所開設から1ヶ月以内)

源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書(兼)納期の特例適用者にかかる納期限の特例に関する届出書

(期限はありませんが、提出月の翌月から、この特例が認められます。)


④ 都道府県税(財務)事務所

法人設立届(設立から2ヶ月以内)

⑤ 市区町村

法人設立届(設立から2ヶ月以内)

 

(以上、最終改訂:2009年8月19日、準拠法令:平成21年4月1日現在)
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